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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)426号 判決 1954年7月20日

主文

原判決を破棄し本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理由

上告人訴訟代理人の上告理由は末尾添附別紙記載のとおりである。

よつて案ずるに原判決の趣旨は上告人は本件バラックを所有することにより、その敷地たる本件被上告人等の賃借地を占有し、よつて被上告人等の賃借権を侵害するものなること明であるから、上告人は被上告人等に対して右バラックを収去してその敷地を明渡さなければならぬ、というにあること原判文上明である、しかし債権者は債務者に対して行為を請求し得るだけで第三者に対して給付(土地明渡という)を請求し得る権利を有するものではない。(物権の如く物上請求権を有するものではない)。それ故被上告人は土地の賃借人であるというだけで(何等特別事由なく)当然上告人に対し明渡という行為を請求し得るものではない。このことは原判示の如く上告人が被上告人の賃借権を侵害して居るからといつて異る処はない。それ故この点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。しかして原審は被上告人の予備的請求に対して何等判断をして居ないから、此点において本件は原審に差戻すべきものである。

よつて民事訴訟法第四〇七条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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